スペースシャトルの概要

スペースシャトルは次のオービタ、固体ロケット・ブースタ、外部燃料タンクから構成されています。それまでの宇宙船が使い捨てだったのに対して、オービタと固体ロケットブースタは繰り返し利用できるように設計されています。

https://iss.jaxa.jp/iss_faq/inf/shuttle.html

スペースシャトルの機体

スペースシャトルは、3つの部分から構成されています。オービタ(宇宙飛行士と荷物を運ぶ宇宙船)と、それを打ち上げるための外部液体燃料タンク、2基の固体ロケット・ブースタです。

オービタは三角の翼がついた航空機のような形で、中型旅客機ほどの大きさです。長さは37m、翼の幅24m、重さ85トンです。オービタの前部はコックピットで、気密室のため宇宙服なしで生活できます。

オービタの後部には、メインエンジン3基と軌道制御用小型エンジンが積まれています。外部燃料タンク(オレンジ色のタンク)はスペースシャトルの中では最大のもので、長さが47m、直径は8.4mあります。タンクの内部は、オービタメインエンジンの燃料と酸化剤となる液体水素タンクと液体酸素タンクの2つに分割されています。

2基の固体ブースタ(白いロケット)は、外部燃料タンクの両わきをはさむように取り付けられています。それぞれの長さが46m、直径は3.7mです。1,500トンの推力を生み出しスペースシャトルを高度およそ40kmまで上昇させます。スペースシャトル全体では長さ56m、高さ23m、総重量2,000トンです。そのうちの約1,800トンが、液体燃料と固体燃料です。

http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/space_shuttle_body.html

オービタの構成

オービタは、クルーが搭乗するクルー・キャビンのある前方部、ペイロードを搭載するペイロードベイ(貨物室)のある中央部、メインエンジン(Space Shuttle Main Engine:SSME)のある後方部から構成されています。

オービタの表面には、大気圏再突入時の高熱からオービタを保護するために、さまざまな耐熱タイル・耐熱コーティング・耐熱繊維が使用されています。

オービタ前方部は、クルーが搭乗するクルー・キャビン(乗員区画)、前方姿勢制御システム、前輪、スペースシャトルの外部との出入り口となるエアロックなどから構成されています。

オービタ中央部は、ペイロードを搭載するペイロードベイ、ラジエータ、ロボットアームなどから構成されています。

オービタ後方部は、メインエンジン、軌道制御システム(Orbital Maneuvering System:OMS)、後方姿勢制御システム、垂直尾翼、ボディフラップなど、飛行するために重要な要素から構成されています。

http://iss.jaxa.jp/shuttle/overview/structure/orbiter/

スペースシャトルの電力

スペースシャトルには燃料電池というものが3基搭載されており、そこから全電力を得ています。スペースシャトルの燃料電池は、水素と酸素を化学反応させることにより電力と水を得ることができます。ここで、生成された水は飲み水としても使えます。

燃料電池から生成された水は、クルーの飲料等に使用するため飲料水タンクへ送られますが、使い切れないため、余分な水は船外へ排出されます。

https://iss.jaxa.jp/iss_faq/shuttle/shuttle_009.html

スペースシャトルのコックピット

スペースシャトルのコックピットは2階建てで上は操縦室のあるフライトデッキ、下は乗組員が生活するミッドデッキです。

フライトデッキには操縦席とたくさんのスイッチや制御装置などがあります。操縦席には左側にコマンダー(船長)、右側にパイロットがつきます。スイッチは全部で1,000以上もあり、手袋をつけても扱いやすいようにつまみやボタンが大きく作られています。

ミッドデッキには居間や寝室、トイレ、キッチン、倉庫などがあり、乗組員が睡眠や食事・運動などの日常生活を送ります。体が浮かないようにするために、足を差しこんで体を固定させるキャンバス地の輪がコックピットの床のあちこちにとめられています。

ミッドデッキの下には、冷却用ダクトや換気扇、ゴミ袋などが詰まっているロワ−デッキがありますが、機械の故障がない限り飛行中には開けられません。乗組員が地上からスペースシャトルに入るためには、機体左側についている直径1mのミッドデッキ・ハッチを使います。

http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/space_shuttle_cockpit.html

エンジン停止状態のままでグライダーのように滑空して帰還するスペースシャトル

スペースシャトルは、オービタのメインエンジンと固体ブースタの推力によって、ロケットのように垂直に打ち上げられます。打ち上げから約2分後に、燃料の燃えつきた固体ブースタがはなされます。8分すぎにはメインエンジンを停止し、空になった外部燃料タンクが切りはなされます。オービタは軌道修正用の小型エンジンを噴射して地球をまわる軌道に乗り、予定された目的の作業(衛星の軌道上への運搬・各種実験など)をおこないます。

オービタが地球に戻るときは、まず軌道を離れるために、オービタの姿勢を進行方向の逆向きして小型エンジンを噴射して速度を落とします。そして軌道からはなれて大気圏に突入する際には再度オービタの向きを元に戻して、オービタの底部に張られた耐熱タイルにより大気との摩擦熱に耐えることができるようになっています。その後、グライダーのように大気中を滑空して着陸します。

http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/space_shuttle_launch_return.html

スペースシャトルはなぜ宇宙に飛び出せるのか?

ロケットが飛ぶのは、膨らんだ風船が空気を噴出しながら飛ぶのと同じ原理です。風船の推力は、外に噴出される空気の流れに依存しています。これはニュートンの運動方程式、F(力)=m(質量)×a(加速度)から導くことができます。それによると、F(力)=(ガス質量流量)×(ガス速度)となります。噴出されるガスの速度が速く、流れるガスの量が多いほど大きな推力を得ることができます。

地上でボールを投げる場合、地平線に向かってボールをとてつもない速いスピードで投げれば、地球は球体ですから1周して戻ってくるはずです。これは、ボールの遠心力と重力が釣り合っていれば可能です。そうなるためのスピードは約7.7km/秒です。これは高度300kmで人工衛星が周回軌道に乗る速度で、「第一宇宙速度」と呼ばれています。地上なら、東京~熊本間1300kmを約3分で飛行する速度です。

スペースシャトルの打ち上げ時の質量は約2000トンで、2000万ニュートンの重力が作用しますが、発射時には約3500万ニュートンの推力が発生し、スペースシャトルは上昇することができます。ところが、この推力で得られるガスの噴出速度は3.4km/秒で、7.7km/秒をはるかに下回り、地球から飛び出すことはできないはずです。

実はガスの噴出速度以外にも、速度を上げる要因があります。スペースシャトルは1秒当たり10.3トンもの大量のガスを噴出しています。これによって急激にロケットの質量が減少します。運動量(=質量×速度)保存の法則から、質量が減ることでロケットの速度が増加します。

宇宙に飛び出すには、優れたエンジンはもちろん、燃料の質量も最適にする必要があるのです。

https://yumenavi.info/lecture.aspx?GNKCD=g007375

スペースシャトル用断熱タイルの高い性能

スペースシャトルは、宇宙飛行士をのせて地球と宇宙空間を行き来し、さまざまな物資を送ったり実験を行ったりしました。一度宇宙空間へ到達したスペースシャトルが地球へ帰還する際は、真空に近い宇宙から地球の分厚い大気層へ進入する大気圏再突入に耐えなければなりません。スペースシャトルが大気圏に再突入する時の熱は1600度以上になりますが、本体に使われているアルミニウムは200度程度の熱で柔らかくなってしまうため、本体を超高温から保護する耐熱タイルの開発はスペースシャトル計画において非常に重要だったとのこと。

そんなスペースシャトルに使用された耐熱タイルには非常に高い性能が要求され、なんと1200度以上の超高温で熱した状態でも人間が素手で触れるという断熱性があるそうです。

https://gigazine.net/news/20200324-picking-up-hot-space-shuttle-tiles/