太陽風はどう作られるのか?

太陽風とは太陽から吹き出すプラズマ(電気を帯びた希薄なガス)の流れのことです。地球軌道での太陽風の速度は400~800 km/s(時速150万~300万km)に達します。太陽風の変動は地球でのオーロラの原因となるとともに、磁気嵐を引き起こして人工衛星に障害をもたらすこともあります。

太陽風はまた、太陽系外から流入する銀河宇宙線を遮蔽し、銀河宇宙線の地球環境への影響を小さく抑えているとも考えられています。

約6000度の太陽表面のまわりには温度が100万度にも達する高温のプラズマ(コロナ)が広がっています。この高温のために外向きに働く圧力がプラズマを押し出して太陽風を作り出していると考えられています。

太陽風の中にはプラズマの細かな濃淡があり、これが太陽風に流されて電波の経路を横切ると、地上で受信する電波の強度が星のまたたきのように揺らぎます。この揺らぎのパターン(スペクトル)を分析すると太陽風の速度がわかるのです。

http://www.isas.jaxa.jp/j/topics/topics/2014/1218_solarwind.shtml

太陽風を起こす3つの太陽活動

太陽を覆うコロナからは、電気を帯びた高温のガスである太陽風が絶えず吹き出しています。しかし、地球でオーロラが生じるほどの強いレベルのものは、いつも発生しているわけではありません。強力な太陽風を起こす代表的な現象は3つあり、それが「太陽フレア」「コロナ質量放出(CME)」、そして「コロナホール」です。

太陽フレアとは、太陽面で起こる爆発現象です。最大級のフレアは、ごく短時間の爆発で10の25乗ジュールという莫大な質量の電磁波を放出します。フレアの爆発によりコロナに漂う荷電粒子(プラズマ)は宇宙空間へと放出され、これが太陽風となって地球に到達します。太陽フレアは可視光線だけでなく、ガンマ線や紫外線、X線などの放射線も同時に放出します。強大な太陽フレアは極めて高エネルギーの粒子を放出するため、デリンジャー現象などの短波通信障害や、人工衛星搭載機器の障害を引きおこす原因となります。

コロナ質量放出=CME(Coronal Mass Ejection)は、太陽から宇宙空間へ突発的に「プラズマの塊」が放出される現象です。太陽フレアと同様に磁場のエネルギーが突然解放されて起こります。コロナに蓄えられたプラズマが雲のように塊り、これらのプラズマ質量が太陽の磁場と共に一気に放出される現象がCMEです。そのため、放出されたCMEの前面には強い衝撃波が生じています。地球磁気圏に磁気嵐を起こす原因となるため、人工衛星や電子機器、通信機器の故障などに繋がります。

コロナホールとは、太陽を覆う大気であるコロナに見られる、低温、低密度のエリアであり、太陽表面をX線で観測した時に巨大な穴のように見えるために、コロナホールと呼ばれます。コロナホールでは、磁力線の流れが断ち切られるため、プラズマは太陽表面に戻されずに、宇宙空間へと放出されます。巨大なコロナホールから放出されるプラズマの質量は非常に膨大であるため、太陽風は普段の2倍から3倍の速度になることもあります。コロナホールは高速太陽風の源と言えるのです。

https://auroranavi.com/aurora/solar-activity.html

2012年の強力な太陽風、地球をニアミス

2012年に地球のそばをかすめた強力な太陽風は、地球を直撃していれば「現代文明を18世紀に後退させる」ほどの威力があるものだったと、米航空宇宙局(NASA)が発表した。

NASAによると、2012年7月23日に地球の軌道上を駆け抜けた太陽風は、過去150年間で最も強力なものだった。

「もしも、(この太陽風の)発生がほんの1週間前にずれていたら、地球は集中砲火を浴びていただろう」と、米コロラド大学大気宇宙物理学研究所のダニエル・ベーカー教授は語る。この太陽風は、これまで知られている中で最大規模だった1859年の「キャリントン・イベント」と呼ばれる宇宙嵐に匹敵するものだったことが分かった。また、カナダのケベック州一帯を停電させた1989年の太陽風と比較しても、2012年の太陽風は2倍の威力だったという。

米科学アカデミーは、1859年と同規模の太陽風が起きた場合に現代社会が受ける経済的損失は2兆ドル(約200兆円)と推計する。また、そこからの復興には何年もかかる可能性があると伝えた。

https://www.afpbb.com/articles/-/3021481

1859年の太陽嵐「キャリントン・イベント」(Wikipedia)

1859年の太陽嵐は、第10太陽活動周期の期間中の1859年に起こった強力な太陽嵐である。英語では1859 Solar SuperstormやCarrington Event(キャリントン・イベント)とも表記される。リチャード・キャリントンによって、現在、記録に残る中で最も大きな太陽フレアが観測された。

1859年9月1日から2日にかけて記録上最大の磁気嵐が発生した。ハワイやカリブ海沿岸等世界中でオーロラが観測され、ロッキー山脈では明るさのために鉱山夫が朝と勘違いして起きて朝食の支度を始めてしまうほどであった。アメリカ北東部でたまたま起きた人はオーロラの明りで新聞を読むことができた。

ヨーロッパおよび北アメリカ全土の電報システムは停止した。電信用の鉄塔は火花を発し、電報用紙は自然発火した。電源が遮断されているのに送信や受信が可能であった電報システムもあった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/1859%E5%B9%B4%E3%81%AE%E5%A4%AA%E9%99%BD%E5%B5%90

有害と思われていた太陽風、実は宇宙線から太陽系を守るプラズマバリアだった

2018年11月、ボイジャー2号が地球から180億キロメートル離れた太陽圏と星間領域の境界となるヘリオポーズを通過しました。ヘリオポーズとは宇宙線と太陽風がぶつかり合う境界のことです。

太陽風は太陽の放射する高熱のプラズマ(荷電粒子のガス)で、地球では人工衛星に障害を起こすなど有害な存在ですが、実はより有害で危険な宇宙線が太陽系に侵入するのを妨害してくれています。

ボイジャー1号は、太陽風が宇宙線の侵入を70%以上カットしていることを発見しました。ボイジャー2号の収集したデータによると、ヘリオポーズの温度は最高で3万1000度に達していたと言います。

このような作用によって、強烈な宇宙線は30%程度しか太陽圏に入らずにすみます。もし太陽風がなければ、太陽系は星間領域から降り注ぐ強力な宇宙線によって、快適に生活できない空間になっていたかもしれません。

https://news.nicovideo.jp/watch/nw6221031

太陽探査機「ソーラーオービター」今後5年で太陽のメカニズムを究明

launch from VAB roof

欧州宇宙機関(ESA)の太陽探査機ソーラーオービターは2月9日、フロリダ州ケープカナベラルからの打ち上げに成功した。ESAは、NASAと協力して宇宙から太陽の詳細な観測を行う。太陽が発する放射線の影響を調べ、地球や宇宙でのリスクを減らすのが目的のひとつだ。これまで誰も見たことがない太陽の極域を撮影する計画も立てられており、今後5年かけて探査が行われる。

ソーラーオービターは、備わったさまざまな計器により、太陽磁場や太陽風などを詳細に観測。コロナなどの高解像度写真も撮影する計画だ。地球と金星の重力を利用して水星の軌道に入り、探査機や地上からは観測できなかった太陽の極域も観測する。最も近づくと、太陽表面から約4200万km。最大500℃にも耐えられるヒートシールドにより計器を守りつつ、任務を全うしてくれることだろう。

https://techable.jp/archives/116884

月の砂に含まれる水は、太陽風で作られていた

月の砂に含まれる水は、太陽風の中の陽子が砂の中にある酸素に衝突することで生成されたものがほとんどであり、彗星や隕石の衝突によってもたらされたものは少ないという研究成果が発表された。

月面で採取された斜長石のリチウム同位体比率から水素の同位体比率(重水素と水素の比率)を計算し、実際にサンプルに含まれる水と比較した。すると、砂粒に含まれる水のうち平均して15%がおそらく彗星や隕石によって外部からもたらされたもの、それ以外が太陽風との相互作用で生成されたものであることが明らかになった。

https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/30_lunar_water

太陽の接近観測で明かされた太陽風の磁場の反転現象

太陽から放出されたプラズマの流れである太陽風は、地球の付近では比較的均一な流れとして観測されます。ところが、水星よりも内側の領域では太陽風の磁場が局所的に反転していることが、パーカー・ソーラー・プローブの観測によって初めて明らかになりました。研究者が「スイッチバック」と呼ぶこの現象は、ひとつが数秒間から数分間に渡り観測されており、太陽に近い領域における太陽風のダイナミックな動きを象徴する発見といえます。

また、地球の付近では太陽から放射状に流れているように観測される太陽風も、自転する太陽から放出されているため、太陽に近いところでは自転にそって回転するように流れていると考えられてきました。この流れはパーカー・ソーラー・プローブによって実際に観測されましたが、その回転速度は理論上の予測値より10倍~20倍も速いことが判明しました。

https://sorae.info/astronomy/20191210-parker-solar-probe.html