地上400キロの実験室 ISS「きぼう」では何が行われているの?

地上約400キロに浮かぶ、人類史上最大の宇宙施設「国際宇宙ステーション」(ISS)。約100×73メートルとサッカー場ほどの大きさがある約420トンの建物が、地球の周囲を1周90分かけて回っています。日本の実験棟「きぼう」の名前を聞く機会もちらほらありますが、中では一体どんな実験が行われているのでしょうか。

 ISS計画は欧米やロシア、カナダなど、日本を含む15カ国で構成されています。日本初の有人実験施設である実験棟「きぼう」は、ISSの中でも最大の実験モジュール。天体観測や地球観測を行う「船外実験プラットフォーム」と、長さ11.2メートル・直径4.4メートルの船内実験室に分かれています。船内実験室の内部には、ロッカールームのように、さまざまな用途に合わせた実験ラックが設置されています。

きぼうでは宇宙観測だけでなく、医学や生物学、物理学に関わる実験も日々行われています。なぜわざわざ宇宙で――と思いますが、その理由は無重力。ISSの中は地球の100万分の1ほどの重力しかないため、地球上では重力によって隠されてしまう現象や、特殊な環境だからこそ起きる現象を細かく観察できるメリットがあります。

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1606/17/news127.html

JAXAが取り組む宇宙環境における主な実験・研究

宇宙環境は、微小重力、高真空、良好な視野、宇宙放射線など、地上では容易に得ることのできない特徴があり、その宇宙環境を利用することにより、極めて広範な分野にわたる研究や実験、観測などを行うことができます。

JAXAはこれまで、小型ロケットやスペースシャトル、国際宇宙ステーション(ISS)などを利用して科学実験を行ってきました。日本実験棟「きぼう」が完成してから、その規模を拡大して、宇宙医学や文化・教育利用など様々な分野の研究を開始しています。

1. 微小重力環境での物質科学研究

地球を回るISSは自由落下運動しているため、その中は地上の100万分の1ほどの重力しかなく、「微小重力環境」と呼ばれています。そのような環境では、重さや比重の違いで物質が移動したり分離したりせず均一に混ざるため、新しい物質・材料の研究が可能です。

2. 宇宙環境における生命科学の研究

長期間「微小重力環境」に生物がさらされることにより、重力が生物にどのような影響を与えているかを調べることができます。

宇宙には太陽や遠い銀河からやってくる宇宙放射線があります。放射線は細胞の中にあるDNAを傷つけることが知られており、大量に浴びるとDNAがうまく機能しなくなったり、突然変異を起こしたりします。将来、人類が宇宙に進出するにあたって、宇宙放射線の影響を研究することは、非常に重要なことなのです。

3. 宇宙曝露環境を利用した船外実験

ISSは地上約400kmを周回しており、その付近の大気圧は10-5Paとほぼ真空な世界のため、地上に比べ大気に妨害されることなく天体観測を行うことができます。

4. 宇宙で生活するための研究

人類が宇宙に進出するためには、宇宙環境や宇宙船内の閉鎖された環境が心身に与える影響を調べることが不可欠です。そこで、その環境下で引き起こされる諸症状への対策法の確立を目指す「宇宙医学」も重要な研究対象です。宇宙での研究の成果は、宇宙活動での問題を解決するだけでなく、地上での生活や病気等の治療に役立つことも期待されます。

5. 文化・人文社会科学や教育への応用

「きぼう」を利用し、教育的な活動や文化・人文的な試みによって、「地球人育成」「人類未来の開拓」「宇宙利用による新たな価値の創出」を目指します。

http://www.jaxa.jp/projects/iss_human/research/index_j.html

総合科学の実験室「きぼう」

運用開始から10年が経った国際宇宙ステーション(ISS)・「きぼう」日本実験棟。これまでに、微小重力環境(μG)での先端的な生命医科学や材料科学に関する実験、船外施設を活用した地球大気や深宇宙の観測、衛星放出、材料やデバイスなどの技術実証、国際協力ミッションなどを通じて、様々な成果を創出してきました。

また、新薬設計【高品質タンパク質結晶生成】、加齢(健康長寿)研究【小動物飼育ミッション】、超小型衛星放出、船外プラットフォーム利用などの重点的に進める4つの分野をプラットフォームと位置付け、その一部は民間企業による事業として成長・発展を続けています。

「きぼう」はアジアで唯一のISSの実験棟であり、科学技術立国、国際協調のシンボルでもあります。総合科学の実験室であると同時に、最先端の科学技術を持ち込んで新しい科学をつくる場で未来型科学でもあるのです。

https://iss.jaxa.jp/kibouser/information/interview/70247.html

アディダスが国際宇宙ステーションで靴のソール製造実験へ

2020年3月2日には、SpaceXとして20回目となるISS(国際宇宙ステーション)補給ミッションの打ち上げが予定されている。今回は、通常の補給品やちょっとしたお土産品に加えて、パートナーと有償の顧客から依頼された興味深い実験機材も含んでいる。さらに実験室として使われているヨーロッパのコロンバスモジュールを拡張するための資材も積まれる。

中でも、奇妙に感じられるのは、Adidas(アディダス)の「BOOST in Space」(宇宙で増強)という試みだろう。同社は、数千もの小さな泡球を融合させることで靴のミッドソールを製造している。これは、もちろん通常は地球上で行われるので重力の影響が避けられない。そこで、それを宇宙で行うとどうなるのか実際に試して調査しようというのだ。

微小重力状態は、引く手あまたの条件であり、宇宙空間での実験プロジェクトの多くは、実際それを求めてのものなのだ。

https://jp.techcrunch.com/2020/02/21/2020-02-20-an-adidas-experiment-and-whole-new-exterior-facility-head-to-iss-next-month/

無重力でがん細胞を無力化できる……? 国際宇宙ステーションで実験へ

いよいよ2020年、国際宇宙ステーションにおいて、豪シドニー工科大学のジョシュア・チョウ博士を中心とする研究チームにより「無重力によってがん細胞を無力化するかどうか」を検証するミッションが行われることとなった。

がんは、遺伝子変異によって、無限に分裂と増殖を繰り返し、他の組織に浸潤したり、血管やリンパ管を通って転移したりする。がん細胞が機械的な力によって互いに感知し合い、一緒になって固形腫瘍を形成しながら、体に侵入するようシグナルを発するポイントまで成長し続けることはわかっている。また、がん細胞が周囲を感知する際に用いる機械的な力は、重力がある環境でのみ存在する。研究チームでは、「重力をなくしたら、がん細胞で何が起こるのか」をシミュレーションするため、内部に小型遠心分離機をつけたティッシュ箱サイズの微小重力デバイスを制作した。

実験は打ち上げ後7日間行われ、研究チームは、実験期間中、打ち上げ場所に駐在して、データを観測し、細胞の画像を撮影する。サンプルの細胞は、実験期間終了後、自動的に冷凍保存され、21日後にはシャトルを通じて地球へ帰還する予定となっている。研究チームは、帰還後のがん細胞を分析し、遺伝子変化などについて調べる方針だ。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/12/2020-14.php

宇宙ステーションでVRを実験活用、“宇宙酔い”解明に

国際宇宙ステーション(ISS)で、VRを使った実験が行われています。目に見える景色、音、そして重力がどのように人の視覚と手の動きの連動に影響するかを調査しています。この調査では、VRヘッドセットOculus Riftを改造したものが使用されています。

欧州宇宙機関(ESA)は、声明の中で次のように発表しています。「視覚と手の動きの連動についての生理学的な理解を高めれば、研究者はめまい、平衡感覚、空間位置把握といった前庭器官についての不調を治療することができるでしょう」また、「宇宙飛行士の宇宙での作業をサポートする、遠隔ロボット操作の最も効率的な方法を開発することにも役立ちます」と続けています。

https://www.moguravr.com/iss-vr-space-sickness/

お酒がまろやかになるメカニズムの解明
宇宙空間で実験

サントリーグローバルイノベーションセンター(株)は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)の協力のもと、国際宇宙ステーション・「きぼう」日本実験棟において「微小重力環境を利用したお酒のまろやかさの形成」に関する研究を開始します。

 JAXA種子島宇宙センターで8月16日(日)に打ち上げが予定されている宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機(HTV5)に、当社で製造した酒類を搭載し、国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟に運んだ上で、第1グループとして約1年間、第2グループとして2年以上の複数年(未定)にわたって「まろやかさの形成」に関する実験を行うものです。

https://www.suntory.co.jp/news/2015/12432.html

中国が宇宙ステーションを国際開放、東京大学ほか9件の宇宙実験を受け入れ

2019年6月12日、中国は独自に構築する「中国宇宙ステーション(CSS:China Space Station)」で日本の東京大学を始め17カ国から募集した9件の宇宙実験を受け入れると発表した。

中国宇宙ステーションに搭載される実験ラックの情報は2018年春に公開されており、国連宇宙部(UNOOSA)と共同でCSSを利用する実験計画を各国から募集していた。6月12日の発表によれば、27カ国から42件の実験計画の応募があったという。最終的に、17カ国23機関による提案が採択された。採択された実験は以下の9件となる。

FIAVAW:中国、日本(東京大学)による、航空機やロケットエンジンにおける燃焼の安定性の研究 など

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/06/post-12323.php